スーパーグローバルハイスクール研究報告書
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−79−第3部SGH実施報告Ⅵ グローバル課題研究  進学・特進コースの取組1 はじめに(取組の概略)  本校は平成27年度にSGHに指定され、この5年間の実践を見た。全校的な取り組みとするために、当初は国際コースと啓明コースで開始した基礎科目「グローバル課題研究」は年次進行的に進学・特進コースにも拡大され、全コースが取り組むようになった。今年度は本校SGHの完成年度であり、研究開発報告書の最後となったことを踏まえ、進学・特進コースの取り組みをまとめておく。  進学・特進コースの取り組みは週に1単位の「グローバル課題研究」の時間を活用して実践している。国際・啓明コースで用いている基本教材テキストは、本校のSGHに協力をいただいているNPO法人NIEDと共同開発したものであるが、進学・特進コースのテキストも、この教材をアレンジ・圧縮したものを用いている。時間的な制約があり、国際・啓明コースと同じものでは消化し切れないため、重要項目に絞った実践となっている。  クラスでの実践では、担任がファシリテーターとなって話題を提供する。従って事前の担任間の確認が重要で、特に進学コースはクラス数が多いため、学年会において次回の実践で用いるテキスト・資料・ワークシートを配布して学年団で共通認識を作っておく。それでもクラスによって展開に違いが出る場合も多々あるが、それはファシリテーターの個性である。  どのコースでもこの科目は、新しい高校生活を始めるに際して、はじめて出会った生徒どうしが互いを知り、クラスでの人間関係を築く一助としての位置付けでもある。仲間との協働を通して他者を認識し、他者の意見を尊重し、学びを深める。これが変わらぬ意図の1つである。2 具体的な取組・各回のテーマ ここ3年間は大枠では同じ内容に取り組んでいる。また、進学・特進コースは第2学年で沖縄修学旅行を実施するので、国際的な視点に立って沖縄の諸問題を学ぶことをSGHの一環として位置づけている。そのため、第1学年のグローバル課題研究は、3学期には沖縄が学習テーマとなる。 例年同じ内容で進めているが、学年・コースによって多少の内容・進度に違いは生じる。そこで一例として現第1学年進学コースの実践を一覧にする。第1学年5月2第1回「なぜ参加型で学ぶのか?〜まずは体験してみよう〜」① 導入 SGHについての概説を行い、本校が取り組んでいる内容や、視点を世界に向けることの大切さ、知識を得るのではなく、協働して議論し、他人の意見を聞くことを通して参加型で学ぶことの大切さ、他人の考えを尊重することを知る。コミュニーションと傾聴を重視することを伝える。② 新聞タワーをつくろう クラスを数個の班に編制し、新聞タワーの作成を行う。新聞紙1枚でどれだけ他班より高いタワーを作れるかに挑む。上手くいかなかった点は班でふりかえる。これは自由な発想と意見を重視する実践の一例である。第1学年6・7月2第2回「なぜ世界について学ぶのか?〜わたしもあなたも世界の一部〜」① バナナに関わる人々 世界と自分がつながっていることを理解する一例としてバナナを用いる。普段何気なく食べているバナナが日本の消費者の届くまでに、実に多くの人々の手を経ていること、その人たちがバナナから得られる利益を分割していることを知る。実践として、自分たちはどの立場でバナナと関わりたいか、いくらの収入を得たいかなどを自由に議論する。② バナナ農園労働者の現実を知る 実際にフィリピンのバナナ農園で働く、生徒と同世代の若者の現実を知り、バナナの安さの背景には、労働者の過酷な労働環境があることを理解する。少しでもフェアなトレードをするためには、どのような方法があるかを議論する。

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