スーパーグローバルハイスクール研究報告書
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−72−第3部SGH実施報告 海外の火力発電所を建設される時、技術は日本と全く同じものを提供されるのですか?現地のニーズ次第。日本の新鋭機に導入しているような最先端の技術は発電所の建設価格も高くなるため、現地のニーズに合わないことがあります。その国のためにベストとなる提案をできるよう心がけています。 JERAは直接海外事業を行わず、グループ企業を設立して、事業を行われていますが、その理由を教えてください。海外事業は現地の方がよくわかっていないと行えず、また即断即決を求められるケースが多いです。そのため、東京の本社に意向確認をせずに現地で意思決定が完結するように設立しています。 最近火力発電の中ではLNG発電が主力になりつつありますが、そのなかで海外に石炭火力発電所をつくるメリットを教えてください。LNGは気体の天然ガスを超低温で液化したものですので、液化・輸送・貯蔵。気化全ての程度で超低温の特殊な技術が必要となり、多額の設備投資が必要となります。自国で天然ガスを産出する国であればいいですが、そうでない途上国にとっては導入にかなり敷居の高いエネルギーといえます。このため、より手軽な石炭に対するニーズは引き続き強くあります。また、LNGに比べて石炭は世界の多くの国で採掘できるため、エネルギーセキュリティーの面からも石炭という選択肢を捨て切れない(捨てるべきではない)という国は多いと思います。 JERAが大量の石炭を日本に輸入した後は、どのように各発電所に配分されているのですか。大型発電所であれば消費量が多いため、海外生産から直接国内の個別の発電所に輸送します。それ以外に、コールセンターと呼ばれる集積基地に運ばれ、そこから小型船やトラック等で運ばれるケースもあります。 JERAは世界のエネルギー問題を解決することが目標と書かれていましたが、現在の世界のエネルギー問題はなんですか。 また、その解決策はなんですか。一番注目している問題は、再生可能エネルギーの大量導入により、電力需給が不安定化していることです。例えば日本では、天気や時刻で大きく発電量が変わる太陽光発電をLNGを中心とした火力がサポートしている状況です。火力がこうしたサポートをできるためには、発電機の出力増減を機動的に行えるようにするとともに、燃料調達量も柔軟に変えられるようにしないといけません。従来、燃料(特にLNG)は年間を通してほぼ一定に輸入されていましたが、JERAは調達規模を生かした交渉によって、必要な時期に必要な量を変えるような調達契約に変えるとともに、自前で大規模なトレーディング機能を設けることで、不測の時は追加調達し、余剰の時は転売するなど、燃料の過不足に対応する力をつけています。 碧南火力発電所の最大設計熱効率は44.38%ですが、効率をさらに上げていくことは技術上可能ですか。発電所の設備は、当時の最新技術(高効率)を用いて製造された、ボイラー、蒸気タービン、発電機、およびそれらを駆動するための周辺装置(ポンプ、ファンなど)を使用しています。その後、技術進歩により、機械装置の損失を抑えた高校率機器も開発されております。しかしながら、それらを採用するには、電力需要傾向や投資効果等を見極める必要があります。ここがクリアーになれば、効率向上も可能かと思われます 各発電所の最大出力の差が大きいように感じられますが、なぜ最大出力に差が生まれるのですか。発電出力は、建設当時の、①電力需要の増加傾向予測 ②大容量型機器(ボイラー・蒸気タービン・発電機等)の製造技術により計画されています。技術進歩により大容量・高効率機器の製造が可能となります。

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