スーパーグローバルハイスクール研究報告書
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−17−第1部SGH研究開発完了報告書に東京まで行かなければならない班もあった。その経験を踏まえ、SGH指定後半からは、地域企業との連携を主にテーマ設定をさせるように軌道修正した。本校は、大都市に類する名古屋市の近郊にあり、また、日本を代表する多くの製造業が集積する東海地区にあるため、企業連携の機会に恵まれた環境にあると言える。しかし、地方のSGH指定校は企業との連携は限定され、一方で東京近郊のSGH指定校は、多様な探究テーマを扱い、フィールドワークもしやすい。SGH事業の目指す教育理念とその教育形態は、生徒の「社会への帰属性」や「学習の主体性」を育むものとして、十分にその効果を実感できるところであった。未来の社会を担う人材育成を目指す探究学習の連携ネットワーク構築に向けて、状況に応じて、学校のみならず、学校を取り巻く外部との双方向の理解と協力が必要である。  (イ)探究学習における評価及び指導教員の専門性 課題探究学習の実践を通じた問題点のひとつに、「生徒の好奇心を育み主体性を育てたい一方で、それを重視しすぎると生徒の選ぶテーマが多種多様となり、教員の指導が追いつかない」ということがある。通常の学校業務に加え、生徒が設定する専門外の課題テーマを教員が学習する時間には限度がある。SGH指定期間中、中部大学の大学院生に協力をいただくことも試みた。しかし、最終的には、「持続的に探究学習をしていくためには本校教員が主となり進めていかなければならない」という原則に立ち戻った。そして、本校教員で指導していくために、グループ研究を主体にして教員の指導件数を減らした。 生徒が受ける評価は、外部連携機関にポスターやプレゼン発表を行い、その内容や発表の仕方へのご意見、ご感想をいただくことが主な評価となった。探究学習を促す自己評価票やルーブリック評価は作成したが、生徒の研究に対する本校教員の評価基準や評価方法を完成するには至らなかった。「評価」は学習のモチベーションとなる。また、課題探究学習は、生徒個人のキャリアガイダンスになる。そう考えると、グループ研究ではなく個人研究が望ましく、その研究を客観的かつ専門的に評価できることが理想である。この理想と現実のジレンマの解消が今後の課題である。  (ウ)生徒が探究学習やその成果発表に充てる時間の確保 授業の予習や復習、課題、部活動、塾や習い事など、生徒はとにかく忙しい。そうした日常においては、意図的に「社会課題の研究テーマを設定してじっくり考えながら探究する」時間を確保する必要がある。その点を踏まえて、本校では、総合的な学習の時間を「グローバル課題研究」として、進学・特進コースは₃か年₃単位、啓明コース(中高一貫コース)では₄単位、国際コース(SGH基幹コース)では₆単位で課題探究学習を実施した。異なる単位数で全校生徒に実践したが、「探究学習には時間が必要である」ということを実感した。調べる ⇒ 考える ⇒ グループで意見を交換する ⇒ 調べる ⇒ 考える ⇒ まとめる ⇒ 発表の準備をする ⇒ 発表する ⇒ 発表後の評価をフィードバックする。端的に言えば、この過程を繰り返すほど、探究学習の成果は上がる。正規に定められたカリキュラムの限られた時間の中で、最終ゴールに向けて計画的かつ効率的に生徒に取り組ませたものの、終始あわただしく研究成果を仕上げる感は否めなかった。大学のAO入試や推薦入試で探究学習を評価する大学も増えたが、「かけた時間の見返り」において大学入試選抜方法のもつ影響は大きい。  (エ)成果発表の機会 「成果発表の機会」は生徒の研究活動の大きなモチベーションとなる。そして、校内発表にとどまらず、外部への発表であれば、それは一層大きくなる。SGH事業が終われば、必然的に実施していた「事業報告会(成果発表会)」はなくなるので、その代替機会を作る必要がある。現在の学校行事である「SDGs学習会」と「HARUHIGAOKA SDGs GLOBAL MEETING」 が発表の機会となるが、とりわけ後者は海外から発表生徒を招き、また保護者や外部の方も参観しているため、今後も継続していきたい。 SGH事業を終えて感じることは、愛知県内及び東海地区は、東京を中心とした関東地区、大阪を中心とした関西地区に比べてSGH指定校が少なく、また、課題探究学習に対する「熱」もさして高

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