スーパーグローバルハイスクール研究報告書
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−16−第1部SGH研究開発完了報告書ら訪れる生徒の多くは、自国の文化に誇りをもち、自国を大切にしようとする意識が高い。それもまた、本校生徒の文化意識に良い影響を与えている。  (ウ)「思考力」と「発信力」の成長 「グローバル課題研究」は、「なぜその問題が生まれるのか?」という自問を繰り返し、「明確な答えのない課題」から「可能な解決策」を見出す課題探究学習である。言い換えれば、通常「答えのある問題学習」を行っている生徒にとっては、あまり経験のない「論理的思考」を強いられる学習である。生徒たちは「課題テーマ」に対する調べ学習をした後、集団(グループ)討論で意見交換し、最終的に考えをまとめて発表する。小論文指導や入試面接の練習においても、生徒が発信する内容に自分自身の意見が見られるようになった。また、生徒に質問を問うと、理由を「ひとつ」ではなく「複数」述べる、または「複数」の理由を論理的に述べようとする姿勢が見られるようになった。自分の意見を導く思考材料、思考の引き出しが増えたと感じる。  (エ)地域社会への帰属性 SGH事業を通じて、課題探究学習の発表の場を地域からいただくことが増え、同時に、地域の課題に目を向ける機会が増えた。活動例を挙げれば、地域文化の持続的継承を目指した「和傘の国際ビジネス」への参画、グローバルな環境問題である「気象変動」を地域レベルに落とし込み、「快適な暮らしと気象変動・温暖化」というテーマで春日井市役所、多治見市役所の環境シンポジウムで発表した。春日井市が主催する環境フォーラムやビジネスフォーラムへ参加するとともに、地域企業の活動を知り、自分たちが暮らす地域社会への帰属意識を深めた。  (オ)「世界観」の広がり 本校のSGH事業は、「多くの製造業が集積する地域の特性を生かした国際交流」を念頭にグローバル人材の育成を掲げたために、アセアン諸国(インドネシア、ベトナム、タイ、シンガポール)に国際交流の重きを置いた。SGH指定後、「アウトバウンド」としては、インドネシア、ベトナムに海外研修を設け、現地の国際機関、企業、高校を訪れ、同時にホームステイも実施している。また、「インバウンド」としては、ホームステイを兼ねた国際的な課題研究発表会として「HARUHIGAOKA SDGs GLOBAL MEETING」を₂度開催し、インドネシア、ベトナム、タイ、韓国、カナダ、オーストラリアといった国々の生徒と交流している。また、春日井KIF(春日井市役所の国際交流地域連携課)を通じて、地元の外国人労働者に本校生徒が日本語や日本の文化を教える交流をしている。該当国は上記のアセアン諸国に加えてインド、パキスタン、中国など多岐に渡っている。こうした諸活動を通じて、生徒、教員の「海外への意識」は、それまでの「欧米中心」の世界観から着実に広がっている。 (6)課題や問題点について 「大学、企業、国際機関、地方公共団体等と連携し、グローバルな社会課題に関して探究学習をしながらグローバル社会で活躍する人材を育成する」というSGH事業を振り返り、こうした教育活動を持続的に行うための課題や問題点を述べる。  (ア)外部協力体制の構築 本校は学校法人中部大学を管理機関とする中部大学の併設校であり、また、同一キャンパス内に大学があるため、大学教員の支援を受けやすい環境にある。しかし、一般的な高等学校を念頭に置いた場合、高校生の探究学習に対する大学側の理解と協力体制の構築は大変であろうと推察する。なぜならば、大学と高校の授業日程の調整、教員の移動、探究学習を進めていく上での事前・事後の連絡など、通常の学校業務に加えてかなりの労力が教員に必要となるからである。企業、地方公共団体との連携について述べれば、本校は、春日井商工会議所、春日井市役所、多治見市役所の協力を得ることができた。とりわけ、春日井商工会議所を通じてSGH事業を遂行したことで、比較的容易に多くの企業とつながることができた。問題点は、生徒の探究学習のすべてのテーマに見合う連携先を見つけられないことである。例えば、探究学習を進めていく上で、その研究テーマに合致する企業が東京や大阪といった大都市にしかない場合もあり、フィールドワークや成果発表のため

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