スーパーグローバルハイスクール研究報告書
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−127−第4部生徒による成果物 核融合発電の場合は、反応で発生した中性子は次の反応に関係しないので連鎖反応は起きず、燃料を1億度という「高温」に加熱し、1立法cmに100兆個という「高密度」にする必要がある。そのため何かあればプラズマがすぐに消えてしまうことで反応が勝手に止まると考えられており、核融合炉の暴走が原理的には起こらないとされている。また、二酸化炭素が排出されないということから地球温暖化抑止にも貢献できるようになっている。               さらに、運転された核融合の発電量は原子力よりも多いとも言われている。そして、現時点では商業規模の実験炉ITERの本格的な組み立てが2020年にフランス南部のサン・ポール・レ・デュランスで始まる予定であり、2025年にファーストプラズマ(核融合試験装置において,装置完成後に初めて真空容器内に着火されたプラズマのこと)が行われる。そして、2035年に本格稼働する見通しだ。このITER計画は日米欧露ほか中国やインド、韓国が加わる大プロジェクトである。また、日本もこの計画の一環として茨城県の那珂核融合研究所に「JT-60SA」というITERに次ぐ規模のトカマク型核融合実験炉が設置され、2020年から先行して実験を開始し、将来的な人材育成を進めていく計画である。このように実用化に向け準備は着々と進んでいっているが、実際に商業運転用の核融合炉を建てる計画が発表されている国はない。それは核融合反応というのが、軽い元素の原子核同士を融合させ、重い元素に変化させる反応であり、その制御には高度な技術を要するからだ。未来科学研究所の発表によると核融合発電の実用化は2050年以降予想されている。上記の通り、核融合反応は原子力発電で利用されている核分裂反応と逆であり、地球上で核融合反応を起こすには、最も軽い元素である水素の同位体である重水素と三重水素を融合させ、ヘリウムと中性子に変化させる反応を利用する。 しかし、これだけでは反応は起こせても発電はできない。発電するにはブランケットが必要だ。このブランケットとは、核融合という反応上、火力発電や原子力発電などのように発生した熱を炉の中から直接取り出してしまうと反応が止まってしまうので、反応によって生じた高速の中性子とヘリウム原子核の運動エネルギーを熱エネルギーに変換するものだ。そんな重要な装置であるブランケットだが、中性子が当たる関係上どうしても放射化(元々は放射能が無い同位体が、他の放射性物質等から発生する放射線を受ける事によって、放射性同位体となること)してしまう。そのため、中性子が当たっても丈図1 核融合炉、軽水炉、石炭火力発電所の吸気、経口摂取による潜在的放射線リスク指数の比較図2 核融合炉構造図

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