スーパーグローバルハイスクール研究報告書
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−121−第4部生徒による成果物結論 序論で述べたインドネシアのエネルギー問題には、インドネシア現地に日本の火力発電所と同等の設備を導入していくことと、現地住民との意見交換で良好な関係を築くことが解決策であると考察した。さらには、インドネシア西部地方への大規模発電所の建設や、海底ケーブルの敷設によって格差解消につながると考えた。しかし、この解決策には多くの難点が伴う。日本と同等のレベルの環境対策機器を導入すれば、現状よりコストが高くなることは間違いないだろう。ただ、前述したような対策は不可欠であると考える。そのために、JICAや政府関係機関による技術提供や日本の電力会社が日本の火力発電で使われていた環境機器などを現地の火力発電所に譲渡するなどの方法が考えられる。また、現地住民と良好な関係を築くことにも多くの障害があるだろう。これまで現地住民は電力会社を相手取り行政裁判をも起こす関係であったからであり、発電所周辺のデモなどにより逮捕者が出ている事実がある。しかし、現在の関係がこのまま続いていけば、この先の日本とインドネシアの関係に問題が出ないとは断言しづらい。現地住民との対話のみで、現在の関係が改善されるとは考えにくいが、今までの一方的であった態度を改め、真摯に環境問題に向き合うという姿勢を見せることが第一歩になることに違いはないだろう。現地住民の要望を時には受け入れることも重要であるかもしれない。この問題を解決することはインドネシアの今後の発展に欠かせないものである。この教訓を踏まえて、今後の開発を着想する段階から現地住民を招いて双方の意見を踏まえて設計するなどの配慮が生まれれば、今後の火力発電建設はよりスムーズに進むだろう。前述したような、インドネシア国営電力会社が需要量と供給量を見誤った事実があるように、この先単なる需要増のみの見込みだけでなく、首都ジャカルタ以外の需要の見込みや、ジャワ島以外の電力不足に目を向けるなどの緻密な計画が必要とされているのも事実である。日本の電力会社は一面的な技術提供のみでなく、このような配電部門の管理体制の支援が必要であると考えられる。そうなれば、もはや日本はインドネシアを一発展途上国として扱うのではなく、一先進国のビジネスパートナーとしてかかわっていく必要性を大いに感じた。多くの日本企業が積極的にこのインドネシアのエネルギー問題の解決に参加し、この問題の早期解決につなげ、首都移転を控えるインドネシアがさらに発展していくことを願いたい。 ≪参考文献≫① 世界の原子力発電所 送電開始と閉鎖の推移  https://www.jaif.or.jp/cms_admin/wp-content/uploads/2019/03/world-npp-development201903.pdf② インドネシアの発電割合  IEA “Key World Energy Statistics 2017“③ 1人当たりの電力消費量  OECD Fact book 2011④ インドネシアの電力販売量  PLN annual report⑤ チレボン発電所の経緯  https://sekitan.jp/jbic/wp-content/uploads/2014/01/201805_チレボン_factsheet.pdf  http://www.wasedachronicle.org/articles/coal-power/g1/⑥ 日本の火力発電所の環境対策  中国電力:http://www.energia.co.jp/⑦ JERA碧南火力発電所訪問  6月14日※1:http://open_jicareport.jica.go.jp/pdf/11784055_01.pdf   インドネシア国 地方電化事前評価調査報告書

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