学校法人中部大学パンフレット
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東海地方を代表する総合大学として、中部大学では理工系を中心に文系も含めたさまざまな分野で他大学に無い特色ある研究が進められており、ユニークな研究成果が注目されています。1.発光生物や植物などを対象にユニークで幅広い生物の研究を展開 応用生物学部が対象とする生物は幅広いのが特徴です。発光生物を専門とする大場裕一教授は、最近の共同研究で、ヘイケボタルの放つ点滅パターンの中に相手を識別するシグナル因子が含まれていることを明らかにしました。この研究成果は、ホタルの保全に関する新しい指針を与える自然保護活動に役立つと期待されます。 園芸学と植物生理学を専門分野に持ち日本におけるサボテン研究の第一人者である応用生物学部の堀部貴紀准教授は、世界で初めてサボテンの水耕栽培法を報告し、水耕栽培や環境制御が生産性や品質の向上に有効であることを明らかしました。また、サボテンの環境耐性や炭素固定に関する分子機構(シュウ酸代謝やシュウ酸カルシウム結晶)の生理的役割や、二酸化炭素の長期固定技術への応用に関する研究を行っています。サボテンの生理学的データをITで分析することで、乾燥地におけるサボテンを利用したカーボン・オフセット事業など、地球環境問題の解決に資する事業・サービスへの研究成果の活用が期待されています。4.考古学や文化人類学分野でフィールドワークも広く展開 考古学者である国際関係学部の中野智章教授は、古代エジプト文明の著名な研究者であり、エジプトにおける遺跡調査のほか、学外でも多数の講演を行っています。中野教授が監修を努めた、「ライデン国立古代博物館所蔵古代エジプト展」は、2020年から全国8会場で開催され、さらに韓国やオーストラリアにも巡回しています。 人間力創成教育院の西山伸一教授は、2016年よりイラク共和国クルディスタン地域で、古代メソポタミア文明の中のアッシリア帝国に関する考古学調査および研究を科学研究費などの予算で実施しています。また文化庁の委託を受け、2018年よりクルディスタン地域およびレバノン共和国において文化遺産を保護する事業を実施しています。日本の技術や知識で海外の文化遺産の保存修復や記録作業を行うとともに、その事業の重要性を日本で知ってもらうために写真展や講演会などを行っています。2.生命科学や物理学で医療や健康増進に貢献 生命健康科学部の山口誠二准教授は、交通事故や病気の治療に伴って欠損した骨を、再建する手術時の手間と医療費を大幅に減らすため、3D積層造形技術によりはめ込む顎骨の形状に合わせて造形し、骨組織親和性を高める独自の表面処理を施した金属チタンの人工骨を大阪医科薬科大学、㈱モリタおよび大阪冶金興業㈱と共同で開発しました。今回開発された人工骨は、手術時に短時間で正確に固定でき、曲げによる金属強度低下リスクもないため、患者の負担軽減や機能性と審美性を兼ね揃えた治療、術者を選ばずに術前の顔貌と機能回復を実現することが期待されています。今後は下顎骨を含む頭蓋骨にとどまらず、他の部分の人工骨事業も展開し、体のさまざまな部位における再建医療に関わることを目指しています。 また物理学者である生命医科学科の新谷正嶺講師は、心筋細胞には、体温の熱を利用して、カオス的不安定性と恒常性的安定性を併せ持った収縮リズムを刻む性質があることを明らかにしました。3.カーボンニュートラル社会の実現に向けた研究を推進 工学部電気電子システム工学科の山本和男教授は、再生可能エネルギー高効率利用技術の研究開発を東京大学などと共同で行っており、風力発電設備の故障原因の約20%を占める落雷の対策を担当しています。洋上風力発電が注目される中、カーボンニュートラル社会の実現に向けた技術の実用化が期待されます。 電気電子システム工学科の飯岡大輔教授は、カーボンニュートラルな社会の実現に向け、再生可能エネルギーを大量に導入した際に、供給電力の品質を改善するのに必要な設備計画や電力機器の研究、既存の電力機器を活かした新しい制御方法の研究を進め、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーを主体とした送配電システムの構築を目指しています。また、停電発生時の早期停電復旧のための、供給経路の切替手順を算出するアルゴリズム(計算手法)を開発しました。停電復旧への最短の切替手順を算出することで、系統事故時の自動復旧や系統混雑の解消、設備容量スリム化の計画業務など、より高度な配電運用へ活用されていくことが期待されています。特色ある研究発光するヘイケボタルアッシリア帝国時代の「未盗掘」レンガ墓の発掘調査風景風力発電設備への落雷金属チタンの人工骨(外観) 中部大学では、研究者一人一人が自らの研究を探求するため、積極的に科学研究費助成事業(科研費)に応募しています。2022年度の科学研究費の配分総額では愛知県内の私立大学で2位となっており、政府からも今後の研究成果が期待されています。 さらに、日本を代表する物理学者、故伊藤早苗先生からのご厚志により「伊藤早苗記念基金」を2021年に創設しました。独創的で将来の学術研究を担う女性研究者・女子学生の活躍を支援しています。 2022年7月に大学共同利用機関の基礎生物学研究所、生理学研究所と包括協定を締結しました。研究・教育の協力的・相補的関係を構築し、相互の強みを強化し、構成機関の融合研究による「創発」と人材の発掘・育成に貢献し、学術の進展に寄与することが目的です。 また、「THE(Times Higher Education)世界大学ランキング2023」では、総合順位で1501+(国内私立総合大学で30位)に、科学雑誌「Nature」による「Nature Index 2022」のEarth & Environmental分野では全国の私立大学で1位(国内全大学中20位)にランクインするなど、世界から高い評価を受けています。評価される研究力人工骨装着イメージ18

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