学校法人中部大学パンフレット2025
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東海地方を代表する総合大学として、中部大学では理工系を中心に文系も含めたさまざまな分野で他大学にない特色ある研究が進められており、ユニークな研究成果が注目されています。特色ある研究クルディスタン地域・ヤシン・テペ遺跡での発掘調査風景歯科用X線CT装置を用いた顔面骨の骨密度解析風力発電設備への落雷カンボジアでのサボテンの栽培技術指導ヘイケボタルの成虫AIを利用した創薬開発に向けた遺伝子解析遺伝子データ取得AIモデル疾患に影響する遺伝子を特定1.発光生物や植物などを対象にユニークで幅広い生物の研究を展開 発光生物を専門とする大場裕―教授は、タイに生息するカタツムリ5種が緑色に光ることを発見し、2024年、その年もっとも注目される軟体動物を決める「国際軟体動物オブ・ザ・イヤー・コンテスト」の大賞に選ばれました。また、大場教授らは、ホタルの生物発光に使われる発光物質ルシフェリンの実用的な簡易合成法の確立に成功しました。環境負荷を低く抑えながら安価に大量生産が可能となる画期的なこの化学合成法は、病原菌などの簡便・迅速な検出法や、遺伝子組換え実験などの技術普及に貢献することが期待されます。 日本におけるサボテン研究の第一人者である応用生物学部の堀部貴紀准教授は、世界で初めてサボテンの水耕栽培法を報告し、水耕栽培や環境制御が生産性や品質の向上に有効なことを明らかにしました。また、「中部大学サボテン・多肉植物研究センター」において、脱炭素技術や持続可能な食料・飼料生産システムの開発研究や共同研究、研究成果の発信等を行っています。最新の研究では、サボテンの腸内環境改善と免疫機能向上が初めて確認され、食用サボテンの新たな健康効果が科学的に証明されました。今後の食品開発や健康促進の分野での活用、地元春日井市の地域ブランド強化につながると期待されています。2.遺伝子研究や分子生物学・栄養学で医療や健康増進に貢献 実験動物教育研究センターの岩田悟講師と生命健康科学部の岩本隆司教授らの研究グループは、これまで不可能とされていた「3つ以上の染色体断片を結合させること」に、動物実験において成功しました。今回開発した技術により、特定の遺伝子や疾患関連の染色体異常を持つ新たなマウスモデルの作製が可能となり、遺伝性疾患の研究や治療法の開発への貢献が期待されます。また、染色体再編成を精密に制御することで、将来的には遺伝子修復技術の進展にもつながる可能性があります。 応用生物学部の大西素子教授は、企業との共同研究で、難消化性オリゴ糖のマルトビオン酸の摂取が顔面骨密度の維持・改善につながることを確認しました。マルトビオン酸カルシウムの継続摂取が将来の骨粗しょう症予防に有用で、さらに美容の観点から容姿年齢の維持(顔面骨密度の低下による「肌のたるみやシワ」の予防)にも寄与できる可能性があると考えられます。また、より早期からの骨密度維持の重要性を広く伝えることにより、若年層の骨密度に対する関心をより高めることも期待されます。3.カーボンニュートラル社会の実現に向けた研究を推進 工学部電気電子システム工学科の山本和男教授は、再生可能エネルギ一高効率利用技術の研究開発を東京大学などと共同で行っており、風力発電設備の故障原因の約20%を占める落雷の対策を担当しています。洋上風力発電が注目される中、カーボンニュートラル社会の実現に向けた技術の実用化が期待されます。また、雷研究者として、落雷事故や対策についてテレビ・ラジオ・新聞などのメディアに多数出演しています。 電気電子システム工学科の飯岡大輔教授は、再生可能エネルギーを大量に導入した際に、供給電力の品質改善に必要な設備計画や電力機器、新しい制御方法の研究を進め、再生可能エネルギー主体の送配電システム構築を目指しています。具体的には、太陽光発電が大量に導入された電力ネットワークの電圧制御手法や、AIを活用した電力需要予測、大規模停電時に再生可能エネルギー電源や蓄電池を活用し地域に電力を供給する手法の研究などを行っています。また、停電発生時の早期停電復旧のための、供給経路の切替手順を算出するアルゴリズムを開発しました。4.生成系AI技術の幅広い領域への応用を可能にする研究に貢献 工学部情報工学科の山下隆義教授、藤吉弘亘教授らの研究グループは、最先端のAI技術を用いて、2100万細胞のマウス単一細胞遺伝子発現データを事前学習させた、マウスの遺伝子解析を行う遺伝子版大規模基盤モデル「Mouse-Geneformer」の開発に成功しました。動物実験のコストを大幅に削減できる可能性が示されたほか、ヒトでは技術的・倫理的に困難な実験のデータも取得可能なため、異種間解析技術を組み合わせることによって、創薬や疾患研究の基盤情報として大きな貢献が期待されます。5.考古学や文化人類学など文系において幅広い国際研究を展開 人間力創成教育院の西山伸一教授は、2016年よりイラク共和国クルディスタン地域で、古代メソポタミア文明の中のアッシリア帝国に関する考古学調査および研究を科学研究費等の予算で実施しています。また文化庁の委託を受け、2018年よりクルディスタン地域およびレバノン共和国において文化遺産を保護する事業を実施しています。日本の技術や知識で海外の文化遺産の保存修復や記録作業を行うとともに、その事業の重要性を日本で知ってもらうために写真展や講演会、国際シンポジウムなどを行っています。 国際関係学部の中山紀子教授は、トルコを対象地域とした文化人類学の研究者です。長期的なフィールドワークを行ったトルコの農村を軸に、女性と世俗化・近代化との関係、ドイツへのトルコ人移民、シーア派的な要素をもつ宗教的少数集団など、ムスリム社会におけるさまざまな研究を行っています。2024年6月には、トルコ・日本外交関係樹立100周年記念事業の一環として、在名古屋トルコ共和国総領事らの参加を得て、中部大学で記念講演会が開催されました。18
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