2024中部大学学園パンフレット
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東海地方を代表する総合大学として、中部大学では理工系を中心に文系も含めたさまざまな分野で他大学に無い特色ある研究が進められており、ユニークな研究成果が注目されています。特色ある研究5.考古学からリベラルアーツまで文系においても幅広い研究分野を展開 人間力創成教育院の西山伸一教授は、2016年よりイラク共和国クルディスタン地域で、古代メソポタミア文明の中のアッシリア帝国に関する考古学調査および研究を科学研究費等の予算で実施しています。また文化庁の委託を受け、2018年よりクルディスタン地域およびレバノン共和国において文化遺産を保護する事業を実施しています。日本の技術や知識で海外の文化遺産の保存修復や記録作業を行うとともに、その事業の重要性を日本で知ってもらうために写真展や講演会などを行っています。 創造的リベラルアーツセンターの鈴木順子教授は、20世紀前半の女性哲学者シモーヌ・ヴェイユを中心とするフランスの思想・哲学、地域文化の研究を行うとともに、21世紀に相応しいリベラルアーツ教育について、実践的考究を進めています。学生が受け身で聞いて知識を増やすだけでなく、自ら必要な知識を選び、ディスカッションを通して意見を表現する授業、また他者の考えを理解・許容しつつ問題解決を図る授業の研究・実践をしています。アッシリア帝国時代の「未盗掘」レンガ墓の発掘調査風景2.物理学や生命科学で医療や健康増進に貢献 物理学者である生命健康科学部生命医科学科の新谷正嶺准教授は、横紋筋(心筋・骨格筋)の最小収縮ユニットであるサルコメア(筋肉の中で収縮機能を起こす最小単位)の自律振動が、カルシウム濃度の変動によって混沌としたカオス的不安定性を示すことを発見し、この不安定性をS4C(Sarcomere Chaos with Changes in Calcium Concentration)と命名しました。S4Cの発見は、心臓のリズム維持と変化への適応メカニズムについての新しい理解を提供し、心臓病治療法の開発に貢献することが期待されています。 保健看護学科の荒川尚子准教授は、タイの農村部における地域保健データベースおよびアプリケーションの開発を行っています。数名のスタッフで1万人の住民に対する必要な健康関連情報が効果的に入力・共有・閲覧でき、日々の実践へのフィードバックができる持続発展的なデータベースシステムの構築によって、途上国農村部の医療事情の改善につながるものと期待されています。タイの農村部で新生児を診察する看護師3.カーボンニュートラル社会の実現に向けた研究を推進 工学部電気電子システム工学科の山本和男教授は、再生可能エネルギー高効率利用技術の研究開発を東京大学などと共同で行っており、風力発電設備の故障原因の約20%を占める落雷の対策を担当しています。洋上風力発電が注目される中、カーボンニュートラル社会の実現に向けた技術の実用化が期待されます。 電気電子システム工学科の飯岡大輔教授は、カーボンニュートラルな社会の実現に向け、再生可能エネルギーを大量に導入した際に、供給電力の品質を改善するのに必要な設備計画や電力機器の研究、既存の電力機器を活かした新しい制御方法の研究を進め、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーを主体とした送配電システムの構築を目指しています。また、停電発生時の早期停電復旧のための、供給経路の切替手順を算出するアルゴリズム(計算手法)を開発しました。停電復旧への最短の切替手順を算出することで、系統事故時の自動復旧や系統混雑の解消、設備容量スリム化の計画業務など、より高度な配電運用へ活用されていくことが期待されています。風力発電設備への落雷1.発光生物や植物などを対象にユニークで幅広い生物の研究を展開 応用生物学部が対象とする生物は幅広いのが特徴です。発光生物を専門とする大場裕一教授は、チュラロンコン大学(タイ王国)との共同研究で、タイに生息するカタツムリ5種が光る性質を持つことを発見し、その年に報告されたもっとも興味深く注目に値する軟体動物を選ぶ「国際軟体動物オブ・ザ・イヤー・コンテスト」の2024年の大賞に選ばれました。発光する生物が陸上から新たに見つかることは非常にめずらしく、また発光するカタツムリは1943年にシンガポールで見つかった種が唯一だと考えられてきました。発光反応の科学的メカニズムとその役割を解明することで、新しい応用につながる事が期待されています。 園芸学と植物生理学を専門分野にもち日本におけるサボテン研究の第一人者である応用生物学部の堀部貴紀准教授は、世界で初めてサボテンの水耕栽培法を報告し、水耕栽培や環境制御が生産性や品質の向上に有効であることを明らかにしました。また、2024年4月に新設された「中部大学サボテン・多肉植物研究センター」を新たな拠点として、(1)サボテン・多肉植物を活用した脱炭素技術や持続可能な食料・飼料生産システムの開発研究、(2)国内外の研究機関・民間企業等との共同研究、(3)研究成果の発信等の事業などを行い、サボテンや多肉植物の潜在能力を最大限に活用した「持続可能な社会」の実現に向けた研究を推進しています。カンボジア地雷原復興事業 Phuphania crossei発光カタツムリ4.生成AIの効率的な活用を可能にする研究を実践 工学部情報工学科の山下隆義教授は、生成AIに必要な「基盤モデル」のメモリ使用量を98%削減可能な技術を開発しました。この技術は、冗長なパラメータを枝刈りする新しいアルゴリズムであり、生成AIのメモリ使用量を大幅に削減できます。また、専用ハードウェアを使えば、処理時間も大幅に短縮することができます。これにより、生成AIをインターネットに接続しなくても利用でき、重要な情報がインターネットを介して漏洩する心配もなくなります。枝刈りアルゴリズム汎用的な基盤モデルパラメータ数:約6.3億個メモリ使用量:約2.35GB特定用途向けモデルパラメータ数:約1,260万個メモリ使用量:約47MBパラメータ98%のパラメータを削減AIモデルのコンパクト化18
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