学校法人中部大学パンフレット
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国際的にも著名な研究者を数多く擁する中部大学では、人類の未来を拓く先端研究が進められています。1.画期的な分子標的薬の実現に挑む-ペプチドの革新的合成- 「ペプチド研究センター」(山本尚センター長)では、タンパク質断片のペプチド分子を従来よりも格別の低コストで合成する技術開発に取り組んでいます。ペプチドは経口薬用の小分子と注射で投与する抗体医薬品用の高分子の中間程度の大きさです。経口で摂取でき、病気の細胞だけに集まる高い治療効果を持ち、しかも副作用がほとんどない全く新しい医薬品として期待されていますが、合成コストが極めて高いため現在のところ医薬品には簡単には使えません。ペプチドを安価に量産し、人々の健康寿命向上に貢献することを目指しています。2.AIで社会を支える研究を推進-人と共に進化するAI- 人工知能(AI)も中部大学が力を入れる研究分野の一つです。AIロボティクス学科の藤吉弘亘教授、情報工学科の山下隆義教授、AI数理データサイエンスセンターの平川翼講師らは、人と共に進化するAIに関する研究に取り組んでいます。その一例として、医師や熟練技術者などエキスパートの専門知識で性能を高めた教育用のAIから、その判断根拠を学習する教育アプリを開発しました。AIに埋め込まれたエキスパートの判断根拠を学習者が効果的に学習することが可能となり、医療分野において医学部生や研修医が患者の画像から疾患を見つけることへの教育や、新人の技術者が欠陥部品を見分ける、農業従事者が作物の育成状況や病害を判断するなど、その他の産業領域での教育への展開も期待されています。3.エネルギー問題・防災減災に挑む-素粒子ミュオンの応用- 「ミュオン理工学研究センター」では、電子に比べて約200倍の質量を持つ素粒子「ミュオン」に関する基礎と応用の研究を推進しています。「ミュオン触媒核融合研究」は持続的エネルギー生成技術への応用、「宇宙線ミュオン研究」は大規模自然災害に対する防災減災への応用が期待されており、ミュオン応用技術の社会実装により地球規模の問題解決に貢献することを目指しています。4.気候変動・複合災害に挑む-デジタルアース(俯瞰型空間情報基盤)- 「国際GISセンター」(福井弘道センター長)は、人工衛星や航空機、ドローン、各種センサー等による時空間情報の収集と処理、予測技術の開発を進めています。現在、デジタルツウィン(自然、生態、社会を再現するデジタルレプリカ・将来予測シミュレータ)を構築して、気候変動への適応や防災・減災に応用するなど、GXの社会実装による地域の豊かな持続性の実現に取り組んでいます。5.情報処理の高速化に挑む-量子コンピューティングの基礎学理- 小澤正直特任教授は、量子情報科学の基礎理論である量子インストルメント理論を確立し、高効率、高精度な量子通信、量子測定、量子計算に必要とされるリソースと理論的性能限界に関する研究を進め、「小澤の不等式」によって物理学の基本法則である不確定性原理を修正するなどの成果を上げてきました。量子コンピュータの実現や心の不確定性の解明につながる研究を進めています。世界が評価する研究力研究トピックハイライト(先端研究) 「宇宙は数学という言葉で書かれている」。こう言ったのはガリレオですが、今や工学分野はもちろんのこと自然科学のみならず、人文・社会科学まで、あらゆる分野で数学はなくてはならないものになっています。人工知能(AI)の革新によって数学は情報革命を支える一方、ものづくりの基盤であり人類の知恵そのものでもあります。 中部大学創発学術院は、このようなあらゆる分野で数学が求められる時代を先取りする形で、津田一郎教授を中心に森重文京都大学特別教授(中部大学特別招聘教授、1990年フィールズ賞受賞)や山口佳三京都大学監事(北海道大学元総長、中部大学創発学術院客員教授)らを招くなどして、数学の一大拠点を作りました。研究面では、戦略的創造研究推進事業や新学術領域研究などの大型研究計画を主導、若手を巻き込んで、脳と心の数学、カオスをはじめ複雑現象の数学、また、これらの成果をもとにした新しいAIの原理解明が行われ、霊長類社会をはじめ生命科学分野のデータ分析にも応用されています。教育面では、高校生や中学生を対象にしたJST数学キャラバンを誘致し、生徒たちが最新の数学に触れる機会を提供しています。さらに2023年度からは「科学技術と社会」の中で創発講義を行い、学術の英知を通じて学生教育に貢献しています。 2023年度、理工学部が新設されましたが、その新設計画の中で2021年度にはAI数理データサイエンスセンターが設立され津田教授が初代センター長に就任し、センターの若手・中堅研究者の大型研究プロジェクト獲得をバックアップしました。国の数理データサイエンス教育プログラムとも連動し、さまざまな場面で「数学を活かす」ための教育・研究を展開しています。中部大学創発学術院 「活かす数学」の拠点としてペプチド研究センター長山本 尚 特定教授創発学術院 院長津田 一郎 教授国際GISセンター長福井 弘道 副学長AI数理データサイエンスセンター小澤 正直 特任教授ミュオン理工学研究センター岡田 信二 教授AIロボティクス学科藤吉 弘亘 教授17 Chubu University

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